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広告代理店スタートアップが10年目に
クラフトビール事業をやる理由

エンターテインメント業界のプロモーションを中心に手掛けてきた広告代理店のステイハングリー。2014年度(7月)に創業し、今年度で10期目だ。今期は、昨期から準備を進めてきたクラフトビール事業を本格スタートさせる年になる。もっぱら広告代理店業に取り組んできた会社がなぜビールなのか。創業社長の大西隼人が語る。

――ステイハングリーは2022年度から自社ブランドのクラフトビールの製造(OEM)・販売やマーケティング・ブランディングを始めました。現在、横須賀にタップルーム(生ビールの提供施設)を併設するマイクロブルワリー(小規模ビール工場)も整備中で、今夏のオープンを予定していますね。音楽アーティストのプロモーションなどの広告代理店業務に専従してきたステイハングリーがなぜ、ビール事業を始めたのですか?

最初からビール事業をやるぞと思ったわけではなくて、まず何か新事業を立ち上げようと考えて、その題材にビールを選んだという感じですね。新しいことを始めたい、有形のモノを扱う仕事をしてエンドユーザーの喜ぶ顔が見たい。この2つが大きな動機です。

起業して10年目には新事業を始めるという構想は5年ほど前からあって、3年前からは社内の主だったメンバーには考えを共有していました。同じこと“だけ”をやり続けていると、私自身や会社が成長できなくなって頭打ちになると思ったからです。

私は大学を卒業して広告代理店に入社し、以降、転職や起業をしても、一貫してプロモーションやPR領域の仕事に携わってきました。今39歳ですから、15年以上になります。これはちょっとどうなのかなと。おなじみのお客さま、パートナー企業と、慣れ親しんだやり方でいつもの土俵で仕事をしていたのでは、人間なかなか成長できなくなると思うんですよ。

しかも我々は広告業界。大好きでずっとやってきた仕事ですが、業界に閉塞感があるのは否めないところです。SNSが台頭して、個人でも強大な発信力や影響力を発揮する人が出てきて、逆に企業が打ち出す広告の中には「ごみ広告」呼ばわりされたりもする。おまけに近年は業界大手の過重労働やハラスメント体質、汚職・不正が明るみに出て、広告業界に向けられる目はどんどん冷ややかになってきました。これでは、才能ある人が入ってきてくれない。

景気やクライアントの業績に大きく影響を受ける広告事業だけ一本槍でやっていく怖さも、コロナ禍を経験して改めて感じました。それで、自分たちで作って売る、プロダクトを持つ事業に挑戦することを決めたんです。新風を吹き込むということが絶対に必要だと思いました。

――その題材にクラフトビールを選んだのはどんな理由ですか?

理由はいくつかあります。私がビール好きだから、というのも確実にその一つです。私は美味しいものを食べること、それと共にお酒を楽しむことが大好きで。社会人になってからも夜間は下北沢の居酒屋でアルバイトをしていて、うちの取締役の武田周之(かねゆき)とはそこで知り合い、一緒に皿洗いをしていました。ちなみに当時、私は会社で課長に昇進して、バイト先で冗談半分に「課長」と呼ばれていたので、彼は初めの頃、私のことを居酒屋の正社員だと思っていたらしいです。

今も食べログやGoogle Maps等でレビュー投稿をし続けていますし、お客さまから仕事のこと以上に「あの辺りで美味しいお店ない?」と相談を受けます。だったら、自分の好きなことでもあるし、周りが私に持ってくれている“食の人”みたいなイメージも生かせそうだし、何より食は世の中からなくならないものだし、飲食にまつわる事業がいいかと思いました。

2020年頃は気軽に外へ飲みにも行けず、家でよく飲むようになっていたので、ふとクラフトビールって個性がさまざまで面白いな、ちょっと勉強してみようかなと思って。それから1年くらいの間に、資格関連をいろいろ(ジャパンビアソムリエ、ビアジャーナリスト、ビアコーディネイター、日本ビール検定等)取りました。知ると余計に好きになるので、新型コロナの流行が少し落ち着いた頃にはビールのお店をたくさん回りました。

勢い余って、都内でクラフトビールが飲めるお店を厳選紹介する「ビアマップス」というWebアプリ/メディアまで作ってしまって。それで、お店の方や醸造会社の方と交流するうちに、業界ごと好きになってきた。自社ブランドのビールを作りつつ、業界全体のプロモーションみたいなところも担っていきたいと思うようになったんですよね。

――マイクロブルワリーは現在、日本全国に700カ所近くあるそうですね。後発組として異業種から参入することに、ためらいはなかったのでしょうか。

私たちがやる意義ってどこにあるんだろう、というのは最初に考えました。ビール業界って国内消費量の9割以上を大手4社が占めていて、ほんの数パーセントをマイクロブルワリーで争っている。この小さなパイを取りにいって、今から700分の1になるのは違うなと思いました。そうじゃなくて、クラフトビールの市場を大きくしながら私たちのビール事業も一緒に成長していく形を作りたいと考えた。

全国のマイクロブルワリーでは、皆さんそれぞれこだわりを持って、美味しいビールを造っています。私も毎日飲み歩くぐらい大好きです。でも、ビール愛が強いあまり、ビールを造ることに集中しすぎているというか、せっかく造ったビールを、いかに知ってもらい、買ってもらって飲んでもらうかという部分がやや弱いと思うんです。私たちはそれこそマーケティング、ブランディングみたいなところは主戦場だから、そこをお手伝いできるし、私たちのブランドやコミュニティも、創り出して大きく育てることができるだろうと思いました。

――その考えが一部具現化したものが、商品発売に先行してのSNSを通じた情報発信や、試作品のテスト販売、ファン・コミュニティの構築、ビールをモチーフにしたキャラクター画のNFT(非代替性トークン)展開といった取り組みなんですね。

商品を売り出す前に、圧倒的な認知を得たいと思って動き始めました。コミュニティは今、Discord(チャットやビデオ通話ができるオンラインツール)のメンバーで5000人ぐらい。Twitterの公式アカウントのフォロワーが8400人程度。まだまだこれからですね。

うちの共同ファウンダーがデジタルコンテンツのクリエイターをサポートする会社をやっていて、20代の彼に「メタバースの世界で乾杯できるビールを作りたいんだけど」と相談してみたら「それもいいけど、今の技術や普及状況だと、まずはCrypto(仮想通貨のブロックチェーン)を使ってNFTをやるのがいいと思う」と意見をもらって。

それなら、「Crypto Beer」というNFTシリーズを展開して、NFT購入者(ホルダー)を巻き込んだコミュニティ作りをしていこうということになりました。コミュニティを「Crypto Beer Punks」と命名、ビールの図柄を用いたイラストを3000点ほど用意して、NFTとして販売し、ホルダーがNFTの保有を楽しむだけでなく、リアルでもメリットを享受できるようにユーティリティ(特典)を設けました。例えば、試作したビールの試飲や提供、販売時の割引適用、グッズの先行販売、イベント招待などです。

ここまでのところ、デジタルとかクリエイティブとか、自分たちが得意とするものを使って、ビールの魅力や多様性を表現できたのはまずよかったなと思っています。デジタルアートを入口にファンを獲得して、そこから、この推しキャラがきっかけでビールが好きになるとか、同じコミュニティの人たちと乾杯したいとかの気分につながっていくといいし、そうなるようにいろんな施策を打っていくつもりです。

ゆくゆくは「メタビール」をやりたいですね。メタバースの世界でアバターが飲めるビール。これなら、体質的にアルコールを受け付けない人でも楽しめる。アバターの手に持たせてかっこいいと思われるものになったり、アバター同士で乾杯して交流がしやすくなったりすると、新しい価値が生まれると思います。

――ビール事業には社内のリソース(人員)をどれぐらい割り振っているんですか?

実は、ほとんど私だけです。広告業もこれまで以上にしっかりやっていくつもりなので。ビールのほうは現時点では武田ともう一人、SNSの運用なんかを手伝ってくれているぐらいですね。

「0」を「1」にするって大変ですけど毎日、楽しいですよ。新人に戻ったような気持ちでわくわくしています。テスト販売に協力してくれる店舗だとか、パートナーを求めて、飛び込み営業のようなことをやって、たくさん人と会う。分からないことは質問する。ちょっと怒られても恥をかいても平気です。

醸造所を横須賀に構えることになったのも、たまたま仲良くしていた方が横須賀に地縁のある人で、物件を紹介してもらった形なんです。漠然と、東京を離れて、また違った環境で仕事がしたかったし、地方創生じゃないけど僕らが頑張ることで地域にいいことがある形が夢なんですよね。Discordのコミュニティには海外ユーザーも多々いるので、街の名前が世界中へ広まる可能性があるし、ブランドを確立できたら国内外から来街者が増えるかもしれないし、事業が拡大していけば地元の自治体の税収が増えるだろうし。

夢は大きく、ビールとこのブランドを全国へ、世界へ届けること。世界最大のビール・コミュニティを作ることです。そして、若い人に、ゼロイチ(0から1への困難な事業)でもこんなふうにできるよって見せられたら幸せですね。私たちの仕事には若い感性がどうしても必要なので。

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